ウッディプッディ

カート

WOODY PUDDY

様々な視点からおもちゃの魅力を探る

『おもちゃのはなし』。第一回は、

兵庫県宍粟市にある福祉施設内の工房

『チェシャ―ズ・ファクトリー』の

おもちゃ職人、若林孝典さんに

お話を伺いました。

子どもには

成功体験だけでなく

失敗も大事

 おもちゃのワークショップをやったりするのですが、子どもが作る時に失敗することもあります。でも、その失敗を失敗で終わらせるのではなく、「納得できるものにするためにはどうすればいいだろう」と、子どもが自分で考えるところが、面白いんですよね。

 僕は、子どもには、成功体験だけでなく、失敗も大事だと思っているんです。

 子どもの賢さとは、学校の勉強ができるかどうかだけでなく、人が生きていく上で基礎になる部分の能力だと思うんですよね。それは、学んで学べるものではなく、自分で経験して、自分の中で検証して育っていくものです。その「仮説を検証する」ことを、子どもは遊びの中で実に自然に行っています。

 自分の中でこうなるだろう、という仮説を立てて試してみて、うまくいったら嬉しい。失敗したらもう1回チャレンジする。初めの頃は失敗が多くても、何度かやったら初めて成功して、喜び、達成感を味わう。その繰り返しで様々なことを学んでいます。


おもちゃの手入れから

学べること

 自分の子どもたちに、最初のうちは、着色したおもちゃを作っていたのですが、子どもたちが自分で手入れをしようとサンドペーパーをかけて、ぐちゃぐちゃになってしまったものが沢山あります。でもね、それでいいんですよ。どんなものがサンドペーパーで手入れできて、どんなものができないのかということを、自分で試してみた上で分かったんです。試して、失敗することが大事なんですよ。

 木のおもちゃは、壊れても割れても修理できますし、手入れをすれば長く使えます。でも、木のおもちゃだからこういう手入れをしなきゃいけない、ということではなくて、それぞれのご家庭が、普段からどういう生活をして、どんな風にモノを大切にしているか、ということが大事なんです。木のおもちゃの手入れも、その生活の一部だと思いますよ。

おもちゃを通して

人間がもつ本来の感覚を

育みたい

 僕は、デジタルの世界においても、感覚の世界が重要な要素を占めていると思っています。おもちゃでも、人間の生きる力の根本といいますか、五感で感じ取れる力といいますか、人間が持つ本来の感覚を育めるようなものを作りたいと思っています。子どもたちは、遊びの中で、試してみて、失敗して、それを何度か続けるうちに成功して、ということを繰り返しながら、そのような本質的な感覚や知恵を自ら育んでいくんです。




若林 孝典

Wakabayashi Takafumi

中京大学にて心理学を専攻、卒業後は神戸市内の児童福祉施設に勤務。自身の子供のためにおもちゃを手作りしたことをきっかけに、おもちゃ職人の道を進む。2016年には合同会社『チェシャーズ・ファクトリー』を設立し、兵庫県宍粟市を拠点に木のおもちゃや家具作りを行う。