Vol.2 絵本は子どもの人生を彩る|神戸市の絵本屋さん『ボタン堂』インタビュー

 街から次々と本屋さんが消えつつある2021年、とある小さな商店街の一角に、絵本専門店『ボタン堂』はオープンしました。ガラス越しに見えるカラフルな絵本の数々に、思わず足が止まり、気づけば懐かしの一冊を手に、その思い出がつい口からこぼれてしまう…。まるで、むかし通った駄菓子屋のような、久しぶりに訪れた実家のような、訪れる人が懐かしさを感じるフシギな絵本屋さん。そんなボタン堂について、店主のながはまあきこさんにお話を伺いました。

絵本は子どもの人生を彩る

ー『ボタン堂』という名前の由来はなんですか?
ながはま:お洋服についているボタンです。色々考えてたんですけどね、ふと「絵本ってボタンっぽいなぁ」と思ったことがあって。
ーボタンっぽい?
ながはま:そう。子育てしてる方には分かるかもしれませんが、ボタンってね、ちょっとだけ面倒くさいんです。子どもに服を着せても、スナップとかマジックテープの方がずっと楽だし、子どもも自分でできるようになるまでに結構時間がかかる。でもね、可愛いボタンが1つ付いているだけで、そのお洋服の雰囲気がガラッと変わるんです。
ー替えは効くけど、ボタンならではの魅力がある。
ながはま:ええ。生きる上で必要不可欠じゃないし、もっと便利なものもたくさんある。けれどそれがあることで、どこが雰囲気が変わる。私にとっての絵本のそんなイメージが、ボタンとぴったり重なったんです。
ー 反対に、絵本の”ボタンらしさ”とは?
ながはま:別に絵本がなくたって、人はご飯さえ食べていれば大きくなるわけです。それに絵本にこだわらずとも、世の中にはたくさんの娯楽がありますよね。公園で遊んだり、おもちゃで遊んだり、ゲームで遊んだり。今なら、スマホでYoutubeに夢中なお子さんも少なくないでしょう。
ーたしかに、絵本がなければ生きていけないわけではありません。
ながはま:ですが、絵本ならではの魅力があることも事実です。世界中の、いろんな時代のアーティストによって描かれる個性溢れるイラストや、美しい写真。現実では起こり得ない物語が紡がれて、空想の世界に浸れる楽しさ。そしてなにより、寝る前にお父さんやお母さんと身を寄せ合って、読み聞かせをしてもらいながら眠りにつく幸福感。
ボタンが洋服に魅力を与えるように、絵本を介した経験や思い出は、子どもたちの人生を彩る存在になれる。そんな思いから、『ボタン堂』という名前にたどり着きました。
ー「絵本なのにボタン?」と色々考えていましたが、お話を伺ってしっくりきました。
ながはま:お客さんの中には、色々考えてくれる方もいらっしゃるんです。「繋ぐっていう意味でしょ?」とか、西巻茅子(かやこ)さんの『ボタンのくに(こぐま社)』という本を持ってきて「これが由来?」とか。色々な解釈があって面白いんです。それを聞いて後から「あ、それもええなぁ…」なんて思ったり(笑)。

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