子どもの学びは「わくわく」から生まれる – しみずみえ

こんにちは!

あそびの専門家、しみずみえです。

 

 前回は「あそびはこどもを賢くするためのもの?〈記事を読む〉」と題して、あそびってもっと肩の力を抜いて、のびのびと楽しんでもいいよね、といったコラムを書かせていただきました。そして2回目となる今回は、その「あそび」そのものについて考えてみたいと思います!

 

目的よりも大切な「わくわく」する気持ち

 

 さて、ここで一つ質問があります。みなさんは「あそび」と聞いて、どんなことをイメージしますか?

 

 ブロックで何かを作る、おもちゃを使ってままごとをする、ブランコに乗る、あるいはテレビゲームに夢中になる・・・。世代や性別など、人によって様々なイメージを思い浮かべるかもしれませんね。

 

 しかし、小さな子どもたちにとっては、必ずしも目を引く楽しいおもちゃだけが楽しいあそびとは限りません。

 

 たとえば、0歳の赤ちゃんが、カーテンが風で揺れる様子をじーっと眺めていたり、1歳児が、大人のスマホや、メガネや、コップを、1つずつ持ってきて、何度も繰り返し「どーぞ!」と手渡したり、2歳児が、部屋の端から端まで何度も「よーいどん!」と走り続けたり、道路の模様に合わせてはみ出さないよう慎重に歩いたり、買い物に行ってスーパーのカゴを持ちたがったり・・・。

 

 小さな子どもが楽しむあそびって、大人目線では「何が面白いんだろう?」と思ってしまうようなことばかりですよね。

 

 しかし本人たちにとっては、見慣れないカーテンの動きやそこから漏れるキレイな光、ものを手渡すと「ありがとう!」と受け取ってくれる大人たちの反応、全力で走る気持ちよさ、歩ける場所が限られるドキドキ感、大人のように買い物をする緊張感と嬉しさ・・・。

 

 そのどれもが、わくわくに満ちた時間なのです。みなさんの幼少時代を振り返ってみて、そのような記憶や思い出はありませんでしょうか?

 

 私は、あそびとは「目的がなくてもわくわくすること」だと考えています。子どもが「面白そう!」とわくわくして、主体的に行動すれば、それは立派なあそびです。そして子どもたちはあそびを通して、周囲の様々な人やものに触れ合い、世界が広がっていきます。

 

「わくわく」は日常生活にあふれている

 

 そんな子どもたちのために、私たち大人ができることはなんだろう・・・。

 

 なんて、ムズカしく考える必要はありません。子どもがわくわくしそうなきっかけを与えてみたり、それを見守るだけでも十分です。

 

 例えば、0歳児におすすめのあそびは、触れて話しかけることです。「たーちゃんの、ほっぺたー!」とか、「ちっちゃい、おててー!」とか、触れているものをそのまま言葉にするだけでOK。

 

 家族の手から始め、ガーゼのハンカチ、ふわふわのタオル、木のおもちゃの丸いところなど、家にあるもので触り心地の良さそうなものを見つけたら、そっと、触らせてあげてください。お父さんお母さんと一緒に一つ一つ触ると、安心感とともに新しい出会いを楽しめます。

 

 1歳や2歳頃になると、行動範囲の拡大に伴い、触れたがるものも多々増えてきます。砂や泥、水、葉っぱや木の枝、花びらの多い花や少ない花、粘土、やわらかい紙や硬い紙、毛糸や布、つるつるしたリボン・・・。

 

 触ったり、並べたり、くしゃくしゃにしたり、混ぜたり、何かに見立てたり・・・。

 

 先ほども書いたように、一見退屈そうなあそびでも、子どもは自分なりに試行錯誤したり、想像をめぐらしながら楽しんでいます。ですので、集中して楽しんでいるときは、近くで優しく見守ってあげましょう。

 

計算や読み書きよりも大切な「学び」

 

 もう少し大きくなると、もはや生活のあらゆる場面が何でもあそびになります。

 

 一緒に買い物に行けば、知らなかった野菜や食材に出会います。大きい・小さい・多い・少ないという感覚も身につきます。お茶を注ぐうちに手のチカラがコントロールできるようになります。イチゴを家族に配るうちに、今日は1人3個ずつだね、なんてことが理屈抜きで実感できるようになります。

 

 大人の真似っこが好きな子どもが多いのは、大人みたいにもっと色々なことができるようになりたい、と思う気持ちの表れだと思うのです。その気持ちを受け止めて、できることを1つずつ増やしていく。

 

 すると、そのあそびはやがて「学び」となって、子どもたちの中に蓄積します。

 

 あそびが学びにつながると言うと、計算や読み書きなどの教科学習的なものをイメージするかもしれません。ですが、遊びを通して得られる学びとは、単純に数値化や可視化できる知識ではなく、新しいものに興味を持ったり、自分でできるようになりたいという好奇心、いわば「学びの土台」のようなものを指します。

 

 日常生活の中で、子どもたちは「あそび」として様々なわくわくするものと出会い、成長するにしたがって、その経験が「学び」となって現れます。

 

 ですので、お父さん、お母さん、または子どもの周囲にいる大人たちには、「発達のためのあそび」にこだわるのではなく、もっと安心して、肩の力を抜いて、子どもたちの遊びを楽しく見守って頂きたいなぁと思っています。

 

 

さて、少し長くなりましたが、ここまでとさせていただきます。

 

今回は主に小さな子が行う日常のシンプルな動作に基づいたあそびをご紹介しましたが、次回はおもちゃを使ったあそびについてお伝えしたいと思います。

 

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

しみずみえ

こどもの育ちとあそびの専門家。 玩具メーカーでの企画開発、KCJ GROUP 株式会社での『キッザニア東京』の創業、こども向け体験講座の企画運営、保育園の立ち上げ支援などに携わる。 現在は、あそびを通して、おとな・こどもが共に自分らしさを育むことを目指し、こどものための遊びプログラムの提供、およびどもに関わる大人のための講座や研修を行う。

【関連サイト】 こども×おとな×しごとプロジェクト https://kocp.net/

【書籍】『あそびのじかん―こどもの世界が広がる遊びとおとなの関わり方(英治出版)』https://www.amazon.co.jp/dp/4862762174/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_S03Z6ZBCF3M0JT4C8DG3

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