Vol.7 ウチの子は絵本が嫌いという誤解 | 神戸市の絵本専門店『ボタン堂』インタビュー

  • LINEで送る

 街から次々と本屋さんが消えつつある2021年、とある小さな商店街の一角に、絵本専門店『ボタン堂』はオープンしました。ガラス越しに見えるカラフルな絵本の数々に、思わず足が止まり、気づけば懐かしの一冊を手に、その思い出がつい口からこぼれてしまう…。まるで、むかし通った駄菓子屋のような、久しぶりに訪れた実家のような、訪れる人が懐かしさを感じるフシギな絵本屋さん。そんなボタン堂について、店主のながはまあきこさんにお話を伺いました。

Vol.7 「ウチの子は絵本を読まない」という誤解

ながはま:お客さんの中には「ウチの子は、絵本を渡しても全然読まないんですよね」と、絵本に関する悩みを抱える方もいらっしゃいます。

 

― 絵本を好きな子と、そうでない子の違いはなんでしょう?

 

ながはま:私は、絵本は小さなころから接する環境にあれば、まずキライになったり、興味が失せることはないと考えています。つまりその違いは、親自身が子どもに対して”諦めモード”になってしまっていることが原因なのではないかな、と。

 

―無意識のうちに「ウチの子はどうせ本を読まない」と、決めつけてしまっていると?

 

ながはま:はい。先程のお客さんの場合、その場で私がお子さんに絵本を読んでみました。すると当たり前のように、1分経っても、2分経っても、静かに集中して聞いてくれました。

 

ー家族以外の方が読んだから、というわけではなく?

 

ながはま:いえ、むしろ絵本は家族に読んでもらう時の方が、子どもにとっては嬉しく、なによりお父さんお母さんの時間を独占できている時の安心感は、他の何者も勝ることはありません。

何か他のことに集中して絵本を読まなかったり、反抗期やイタズラでイヤがって見せたりと、一見して「ウチの子は絵本がキライなんだ」と思い込みやすい状況は多々あります。しかし、その誤解が親の中で諦めとなってしまうと、絵本を楽しむ時間を失ってしまいます。

  

―幼稚園や保育園でも絵本を読む時間があるので、家では絵本を読まなくてもいいのでは、という方もいらっしゃいます。

 

ながはま:幼稚園/保育園/学童などは、先生と生徒の1対多数がほとんどです。また、たとえ1対1でも、家族ほど近しい距離ではないので、子どもにとって心からの安心は感じられません。外での絵本の体験もいいけれど、家族にしかできない読み聞かせの時間があることを忘れないでほしいです。

 

― お話を伺っている中で、私自身の絵本の記憶を探ってみたのですが、お母さんの匂いや、独特な読み方など、確かに絵本そのものというより、家族との思い出として蘇ってくるものが多いです。

 

ながはま:たとえ文字が読める年になった子が「読んで読んで!」と来た時でも、「自分で読めるからええやろ!」と突き放さずに、読み聞かせをしてあげてください。お父さんの膝の上、お母さんの腕の中、身体が触れ合って自分のためだけに絵本を読んでもらえる時間は、子どもにとっての幸せそのものです。

 

  • LINEで送る