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子育て

現役保育士に聞く「レッジョエミリアアプローチ」 Vol.2

 

 目次


 

  Vol.1:レッジョエミリアアプローチってなに?

  Vol.2:子どもの”夢中”を記録する

  Vol.3:過程を知ることが、子どもの探究心を深める

  Vol.4:先生も子どもも、自分らしくいられる保育園

 

保護者との情報共有で、さらに子どもを理解する


 ─ 保護者の方とは、どのようにコミュニケーションをとっていますか? 平野 保護者の方に子どもたちの様子を伝える手段としてインスタグラムを積極的に活用していますね。園全体の様子に加えて、保護者の方に許可をいただいた子に関しては、どの子が何のどんなところに注目しているといった、一人一人の細かな様子も共有しています。  多くのお父さん・お母さんが経験したことがあると思いますが、園にお子さんを連れてきたときに「やだ〜!!」と大泣きしながら別れるときがありますよね。「あの後、大丈夫だったかなぁ…」と、心配に感じる方も多いと思います。そんなとき私たちは、インスタのストーリーを使って「今はこんなに楽しく遊んでいますよ!」と、その子の姿をみて安心していただけるような工夫もしています。 山東 また、うちでは連絡帳のスマホアプリを活用していて、オンライン上で保護者と即時に共有できるようにしています。デジタルの連絡帳やインスタを使って相互に即座に発信できることは、今の時代ならではですね。 

まるでブログのように楽しく読める連絡帳。就寝時刻やトイレの回数などもビジュアルで表示されるので、子どもたちの家での様子が手にとるようにわかります。
  平野 連絡帳アプリのいいところは、保護者の方も写真をアップしてもらうことができるので、子どもたちの家での様子がとてもわかりやすいことです。  園と家、それぞれ環境は異なるものの、いずれか一方を知っているだけでは、子どもたちの行動の理由を十分に理解することができません。  例えばある日、一人の子がトイレの便座に反対向きに座っていました。「反対だよ」と教えてあげたいところですが、先程のティッシュの例と同様に、すぐに教えることはせず、あえてその時は訂正せずにいました。その数日後に連絡帳を見ると、同じく反対向きに座っている写真が載っていました。どうやら家のトイレは大きすぎるため、安定して座るためのそのご家庭独自の手段だったようです。  理由が分かると、子どもが納得のいく説明がしやすくなります。実際にこの子の場合、園のトイレでは前を向いて座っても安全なことにすぐ気づいていました。子どもだからと侮ってはいけませんね。少しサポートしてあげるだけで、自分で理解して、納得して、行動に反映するということがしっかりできるんです。 

カメラ目線や可愛いポーズよりも大切なこと


エミリアプリスクールで制作される”ドキュメンテーション”。 山東 もちろんアナログの記録もあります。観察した子どもたちの様子を、写真や手書きの文章などで先生が各々自由にまとめて、子どもや保護者の方に共有するんです。こういった観察記録を、レッジョエミリアアプローチでは「ドキュメンテーション」と呼びます。  ─ 子どもたちそれぞれに、ドキュメンテーションが作成されているんですね。 平野 そうです。例えばこの子とお散歩に行くと、いつも何かを見ながら歩く動作をしていることに気づきました。それをご家族の方と共有すると、どうやらおうちで地図や宇宙にはまっているらしく、お散歩のときの動作は地図を見る動作だったようです。そこでドキュメンテーションを作成し、保育園でもこんな風にしていましたよと伝えると、ご家族の方にとっても喜んでいただけました。 

散歩の時は自分の地図を開いて進む方向を決める、大冒険気分の男の子。 山東 小さな子は言葉によるコミュニケーションが難しいので、こちらから「もしかしたら彼はこう思っているのかな」と、仮説を立てて対話していく感じです。なので、保護者との情報を共有していないと気づけないこともたくさんありますね。  ーよくみると、カメラ目線の写真やポーズをとった写真などはあまりないんですね。 山東 その子が夢中になっているものや様子を捉えることが目的なので、その動作を止めてまで、無理矢理目線やポーズを指示することはしませんね。そこは一般的なアルバムとは違うかもしれません。本人がドキュメンテーションを見れば、自分が好きだったことや大切にしていたことをしっかりと思い出したり、再認識することができると思います。 

カメラ目線やポーズはないものの、自分の好きなものに夢中な子どもの様子がよくわかるドキュメンテーション。先生の丁寧なコメントは、保護者の立場になると「うちの子をしっかり見ていてくれてるんだなぁ」と嬉しい気持ちになります。 ─ ドキュメンテーションを作る際、「こうあるべき」といったルールはありますか? 山東 いえ、それぞれの先生に任せて自由に作ってもらっています。子どもたちが違うのと同じように、先生たちにも個性があります。なのでドキュメンテーションでは、それぞれの感性を活かしてもらいたくて、フォーマットや手段は原則自由にしています。手書きでもいいし、パソコンでもいい。とにかく先生がやりたいように、楽しくできる方法でやってくださいと伝えています。  ― 子どもと同様に、先生の業務にもレッジョエミリアアプローチの信念が反映されているんですね。 平野 そこは働く側としてもプレッシャーを感じず、楽しく取り組めます!

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エミリアプリスクール


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現役保育士に聞く「レッジョエミリアアプローチ」 Vol.1

 

 目次


  Vol.1:レッジョエミリアアプローチってなに?

  Vol.2:子どもの”夢中”を記録する

  Vol.3:過程を知ることが、子どもの探究心を深める

  Vol.4:先生も子どもも、自分らしくいられる保育園

 

個性や多様性の尊重が叫ばれる昨今ですが、すでに1960年代のイタリアでは、子どもの個性に着目した「レッジョエミリアプローチ」が確立しつつありました。あまり聞き慣れないその名前からは「難しい規律がたくさんありそう」「お金がたくさんかかりそう」といった印象を抱く方もいるかもしれません。

ですが、私たちの何気ない生活の中でもできること…いや、すでにみなさんが普段何げなく行なっているであろうことの数々が、レッジョエミリアアプローチでは大切にされています。

今回私たちは、神戸市中央区にある保育施設『エミリアプリスクール』にて、代表の山東さんと保育士の平野さんに、レッジョエミリアアプローチについて、そして本施設で具体的に行っている保育の様子についてお話を伺ってきました。

そもそも「レッジョエミリアアプローチ」とは?

 「レッジョエミリアアプローチ」とは、「子どもの無限の可能性」を伸ばすことを大切にしている独自の教育アプローチ。1991年にアメリカのニュース雑誌『ニューズウィーク』にて「国際的な幼児教育のロールモデル」として取り上げられ、ディズニーやグーグルの社内保育施設でも採用されるなど、近年世界的な注目を集めています。 発祥はイタリア北部の町レッジョ・エミリア。第二次対戦後、半壊した街で市民が一体となって行動し幼稚園を建設したことに端を発します。以降、教育者のローリス・マラグッツィを中心に保育施設の建設や教育活動が活発となり、市民運動と教育者の一連の教育活動によって、徐々に世界にその名が広まりました。 

子どもたち一人一人の成長を見守ってくれる保育園

左:エミリアプリスクール代表の山東さん 右:同保育園の保育士の平野さん

ー ウッディプッディの進藤と申します。本日はよろしくお願いします。 山東さん・平野さん(以下敬称略) よろしくお願いします。  - こちらの「エミリアプリスクール」では、レッジョエミリアアプローチの考えを主軸とした保育園と伺いましたが、まずはそちらについて伺ってもよろしいですか?
 平野 まず、「レッジョエミリアアプローチ」は1950~60年代のイタリア北部の街で生まれた教育アプローチで、「子どもには一人一人違う考え方がある」という意識を大切にしています。私たちは、そんなレッジョエミリアアプローチの精神に基づいて、子どもたちがそれぞれどんなことを大切にしているかを観察し、一人一人違ったアプローチで個性を育むサポートをしています。  例えばある日のお絵かきの時間、「こんこんこん」とクレパスを紙に打ち付けて点を描く子がいたのですが、次第にその「音」に好奇心を抱いたようで、クレパス以外のものの音を鳴らし始めました。
  一般的にはここで「席に戻ってみんなとお絵描きしようね」と行動を修正しがちです。しかしここではむしろ逆で、先生が他に音のなるものを探してその子の近くに置いてみたり、「違う音がするね」と声かけをしたり、その子の好奇心に先生が寄り添う形で遊びの発展をサポートします。 

 ー 他の子どもたちとは、違うことをしてもいいんですか? 山東 国籍にかかわらず、そもそも人はみんな違う考えを持って生きています。たとえ、0歳や1歳といった生まれたばかりの子どもだってそう。そんな、一人一人違う子どもたちの個性を伸ばすサポートをするため、ここでは子どもたちの様子をしっかりと観察しています。  ー 子どもたち一人一人を観察するには、少人数の先生では難しいですよね。そこはどうされていますか? 平野 ここは一般的な保育施設と比べて、子ども一人当たりに対応する先生の人数が多いんです。なので、子どもたちに合わせた柔軟な対応が可能です。決められたカリキュラムをこなすのではなく、その時々の反応を見て、渡すおもちゃを変えたり、声掛けの内容やタイミングを変えたりと、常に流動的に動いています。 

エミリアプリスクールの日常風景。どの子にも隣では先生が見守ってくれています。

ー 人数が多いとは言え、子どもたちをずっと観察するのは大変ではないですか? 山東 う~ん…大変かなぁ?全然そんなふうに感じたことはないですね。平野先生はどう? 平野 そういった感覚は全然ありませんね(笑)  むしろ子どもたち一人一人に十分な時間を使えるので、保育士としてしっかりと成長を見守れることがとっても嬉しいです。 

ビニール袋も落ち葉も、子どもにとっては立派な教材

窓際にあるビニール袋。初めに見た時は「なんだろう?」と思いました。

― こちらの部屋に入った時から気になっていたのですが、この部屋にはいくつかレジ袋が干してありますよね。これは何でしょうか? 山東 子どもたちが喜んで遊ぶので置いてるんです。かしゃかしゃと擦れる音、ふわふわとゆっくり落ちる様子、どれも大人からすれば退屈に見えるかもしれません。ですが、子どもたちにとっては新しい発見なので、興奮して楽しく遊んでいます。
 子どもの独創性を伸ばす「自由な芸術活動」は、レッジョエミリアアプローチにおいて大切な要素の一つ。その子が何に好奇心を抱いているかが重要なので、使うものはなんでもアリなんです。

 ― その子の興味次第、ということですか? 山東 ええ。特に、お散歩に出かけたときに目に入る自然の素材は全てがそうです。道端に落ちている葉っぱ、花、石、枝、虫など、子どもが興味をそそられるものであれば、環境そのものが「教材」です。  先ほどのクレパスの例と同様、同じものでも子どもによって注目するポイントは様々です。葉っぱの「数」に興味を持つ子もいれば、「色」に興味を持つ子もいる。「この子は葉っぱの色に興味を示してるなぁ」と感じたら、さりげなく別の色の葉っぱを近くに置いてみる。すると、「あ、同じ色!違う色もある!」と、自分で発見できたという喜びに満ち溢れ、とても楽しそうな様子を見せてくれます。

  遊ぶものが重要なのではなく、それを通して子どもがどんなことに興味を持ったか、なにを発見したかが大切なんです。レッジョエミリアアプローチにおける私たち保育士の役割は、子どもたちの様子をしっかりと観察し、その感性を広げるための手助けをする「仕掛け人」です。そのためには、私たち大人も、小さなことに気づく感性が必要です。 

気持ちを尊重された子どもは、他人の気持ちを尊重できる子どもになる


― エミリアプリスクールの子どもたちは、普段どんな様子で過ごしていますか? 平野 この園で過ごす子どもたちは、自分で発見したり考えて行動することを心から楽しんでいるように見えます。2歳頃になって徐々におしゃべりができるようになると「ご飯の時間だけど、もうちょっとだけ遊んでもいい?」と、自分の考えをはっきりと伝えることができます。  さらに年齢を重ねると「私はこれが好きだけど、○○ちゃんはこっちの方が好きだと思う!」と、自分の主張に加えて、他の子の個性を認識している様子もうかがえます。  ― なんだか、2〜3歳にしてはとても大人びていますね。 平野 ここでの生活は「みんな一緒が当たり前」ではなく、「みんな違ってて当たり前」なんです。もちろんケンカやモノの取り合いをすることもありますが、それはあくまで成長の表れです。  それぞれの個性を認められて過ごすうちに、自分の意見を伝えてくれますし、子どもたちも相互の違いを楽しめるようになります。 

 ― 子どもたちに対して「こうしなさい!」と指示することはありますか? 平野 身の危険に直結することを除けば、基本的には子ども自身が答えを見つけるまで待つ姿勢を大切にしています。例えば、鼻水が垂れている子どもがいるとき「ティッシュとっておいで」と伝えると、ティッシュペーパーを持ってくる子もいれば、紙質の硬いハンドペーパーを持ってくる子もいます。  ここで「それは違うよ」と教えたくなりますが、そこをグッとこらえて少し待ってみます。すると、子どもなりに不快感や違和感を感じる様子を見せる時があります。そんな時に「それ、いつものティッシュよりちょっと固くない?」と、ヒントを出してあげるんです。  ─ 正解を教えるのではなく、あくまで子どもが気づくことを待つということですか? 山東 「これがティッシュだよ」と渡して正解を教えてしまうのは簡単なことです。ただ、それだと学びも浅く、子ども自身も達成感も感じないでしょう。自分の判断で行動し、違和感を感じ、再度チャレンジする。そこで成功した時は「できたね〜!」と褒めてあげると、子どもたちも徐々に自分に自信を持ってくれるんです。  「教える」ではなく「導く」というイメージですね。「痛くない?もっとやわらかいものあるかもよ?」など、あくまで私たちはサポートに徹し、正解には自分の力でたどり着かせる。その方が、結果としてしっかり覚えてくれるんです。  ─ 早く答えを教えたくてうずうずしたり、じれったくなる時はありませんか? 山東 答えを知っている大人にとって、見守る時間が焦ったいのは当然です。ですが、頭ごなしに「これはこういうものなの!」と教えられたところで、何も知らない子どもにとって理解につながるはずがありません。  子どもが自分の考えを持って行動するためには、まずその子が納得できるように向き合い、対話していくことが大切です。 

エミリアプリスクールのコンセプトは「子ども達の力を信じて!」

平野 子どもの力を信じて待つこと、納得できるまでサポートすることは、レッジョエミリアアプローチの「ひとりひとりの個性を大切にする」という点に繋がると思っています。

山東 大切なのは、子ども自身の気持ちを蔑ろにしないことです。そして、自分の気持ちを尊重してもらえたという経験は、やがて他の人の気持ちや、自分とは異なる価値観を尊重する気持ちに繋がります。



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「褒めて伸ばす子育て」で、子供は本当に伸びるの?

「褒めて伸ばす」の落とし穴

「褒めて伸ばす」の落とし穴

「子どもは褒めて伸ばしましょう!」

誰でも一度は聞いたことがあるかもしれませんが、闇雲に褒めることは、時に逆効果になってしまうことがあります。

本当に大切なことは「ママとパパは、いつでも自分を見守ってくれているんだ」と、子どもが安心できること。

本記事では、褒め過ぎることの落とし穴と、それを回避する案についてお話させて頂きます。

私たちは、なぜ子どもを「褒める」のでしょう?

子どもの成長は、とにかく嬉しいものですよね。寝返りを打ったり、よちよち歩きをしたり、ある日ついに掴まり立ちが出来るようになったり…。

当の本人よりも、ママやパパの方が喜びに溢れ「すごいすごい~!上手だね~!」と、思わず大声をあげてしまうものです。そして、そんな大人たちの様子を見て、子どもは更に嬉しくなり、次々に新しいことにチャレンジしていきます。

このように「褒めて伸ばす」とは、純粋な喜びの表現はもちろんのこと、褒めることを通して子どもの自発的な意欲を促すことが目的とされています。

実際に子どもたちも、褒められるほど嬉しくなってどんどん行動するようになりますが、ここにある“落とし穴”があるのです。

「褒める」の背後にある「こうなってほしい」という思惑

ここで、少しだけ考えてみましょう。

そもそも子どもたちは、ママやパパが望んだり、何か与えたりするから成長するのでしょうか?

私は、そうではないと思います。

子どもは、誰に言われるでもなく自ら新しいことにチャレンジすることで経験を積み重ねていくものであり、だからこそ「嬉しい」「褒めてあげたい」という感情に繋がります。

しかし、いつだって純粋でいられる大人はあまり多くありません。

「お手伝いをする子はかしこいね!」「ちゃんと成功できて偉いね!」

のように、大人の都合に合わせた行動や、物事に成功した時にだけ褒めるようになると、本来の素直な感情表現として行なっていた「褒める」から、いつの間にか、特定の価値観に基づいた「評価」の押し付けが目的にすり替わってしまいます。

加えて、成長に伴い子どもには「自我」が芽生えます。

一般的に4歳を過ぎた頃には、子どもなりの「納得する出来栄え」といった価値観が徐々に形成されるのです。

今までのように「上手だね~」と褒めたところで、「こんなの上手じゃない!」と怒り出したり、逆に、褒められないことは「失敗したら褒めてもらえない…」「褒めてもらえないことは、やらない方がいいんだ…」と認識し、チャレンジに対して消極的になってしまうことがあります。

たとえ純粋に褒めているつもりでも、その背景には少なからず「こうなってほしい」という思惑が隠れていたり、子供たちの成長に伴って、従来とは異なる方向に向かってしまうことも起きかねないのです。

落とし穴を回避するには、素直に「事実」を伝えてみる

「褒める」が万能ではないとなると、一体なんと声をかけたらいいのでしょうか?

そこで、私がおススメするのは、シンプルに「事実」を伝えることです。

「ひとりでできたね!」

「最後までがんばれたね!」

そんな、だれが見ても同じ「事実」を伝えてみてください。

褒めることに比べて、どこか頼りなくインパクトに欠けるように思えるかもしれません。

しかし、子どもが本当に必要としていることは、単に褒めてもらうことではなく「ママやパパに見守っていてもらうこと」なのではないでしょうか。

上手くいった時も、そして失敗してしまった時も、どんな時も変わらずそばで見守ってくれているママやパパは「いつでも自分の味方なんだ!」と安心できるからこそ、子どもはもっと頑張れるし、もっとチャレンジできるのです。

「褒める」こと自体はとても大切なことです。

しかしその便利さ故に、知らず知らずのうちに足を捕られてしまう危険も孕んでいます。

「すごいね!」「かしこいね!」「上手にできたね!」

時々、意識して「褒める」言葉はちょっとだけ胸にしまっておいてみてください。

その代わりに、子どもが何を感じ、何に夢中になっているかを、子供の目線に立って観察し、シンプルに想いを共有してみると…子育てはもっと楽しく、もっと豊かになるかもしれません。

ライター:村上三保子

2歳からのこども料理教室「こどもカフェ」主宰「上手につくる」ことより「楽しくつくる」をコンセプトに、7,000人以上のママやパパに料理を通して子育ての楽しさ、子どもが自立する子育て法を伝え、教室のリピート率は9割を超えている。幼稚園、保育園など講演多数。「おはよう朝日です」(朝日放送テレビ)などのメディア出演もあり。2020年10月初著書「ようこそ!子育てキッチンへ」出版

「ド田舎子育て」意外とイイとこあるんです!

私は、京都府南丹市美山町で1歳半になる男の子の子育てをしています。

日本の原風景とも言われるかやぶきの里が有名で自然豊かで空気も美味しくとても良い場所です。

「ド田舎での子育て」をして良かったなぁと思うことを皆さんにお伝えできればと思います。

ド田舎子育てのここがイイ①:気楽で心地いいママ友コミュニティ

 美山にきて子育てをしているなかで驚いたことは、意外と子どもの数が多いことです。イメージでは美山全体で5・6人程度なのかなぁと思っていましたが、息子の同級生は10人以上もいるそうです。

 私の住んでいる地区には5人も同級生がいて、先輩ママさんも多く、知り合いがいない私にも気さくに声をかけてくださって、いつも相談に乗ってもらっています。また同級生のママさんたちで共有のライングループがありそこではいらなくなったおもちゃや服などの交換、子育て情報などを知ることができます。

 最初私は、都会だと公園デビューなどでママさんたちの交流もあり大変そうだなと思っていました。そう感じるお母さんも多いと思います。ですが、美山だと外全てが公園みたいで、そこにはママさんたちの交流があるわけでもなく、ママさんたちが多くない分、逆にメリハリのある交流ができて、すごく私には合っているなと思っています。

こド田舎子育てのここがイイ!②:ココロで繋がる子育て支援

 都会に比べると多くはありませんが、子育て支援も充実しています。市の子育て支援課が毎月開催している『子育て相談』をはじめ、毎週開かれる妊婦さんや親子が集える会などがあり、他の地域の妊婦さんとの交流の機会や子育てでわからないことも気軽に相談できる体制が整っています。

 特に『子育て相談』は、少人数で行われることが多く、一人ひとりに長く時間を取ってもらえるので、余裕を持ってあれこれ聞きたいことを相談することができます。長く保健師の皆さんとおはなしすることで、顔馴染になり息子のことを覚えてくれていることが何気に一番嬉しかったりします。

ド田舎子育てのここがイイ!③:親も子もありのままでいられる環境

 そして特に良かったなと思う点が2点あります。

 まず一つ目は、子どもの泣き声に悩まなくて良いことです。都会だと夜中に子どもが泣いた時に横の家やマンションのまわりの方に気を使います。テレビのニュースなどでも騒音トラブルで一例として取り上げられることもあります。

 ですが、美山だと泣きたい放題、騒ぎたい放題です。隣近所の家は100メートル以上離れているので、迷惑をかけることがありませんし、むしろ日中外ではしゃいでいると近所のおばあちゃんに「大きくなったねー」と声をかけられ、息子は「田舎のアイドル」と化します。子どもは泣いたり騒いだりすることが自然だと思うので、都会だと「静かにしなさい」のところが田舎だと「もっと泣いても良いよ」になります。私自身にとってもストレスフリーなのでとても助かっています。

 二つ目は、やっぱり自然を間近で感じることができるところです。育児家事に追われる毎日ですが、ふと窓ぎわに鳥が寄って来るだけで心が軽くなります。また、四季に寄って変化する自然を、子どもと一緒に楽しめることが親子ともに良い体験で、思い出もより一層多く残るだろうなと思います。

 不安から始まる子育てですが、田舎で子育てをはじめた私は、想像以上に楽しんでいます。毎日不安は襲ってきますが、その都度まわりの環境や人に支えられて、気持ちが楽になって「がんばろ」と思えます。

 これからも子育ては続きますが、美山でしかできない子育てをするのがとても楽しみです。

Harubiyori

マイペースで好奇心旺盛の1歳の男の子と
ド田舎でのんびり・のほほんとした日々を過ごしています。

初めての子育てと田舎での子育ての魅力をコラムを通して
お伝えできればと思っています。